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【感想・あらすじ】『羅生門』芥川龍之介 作

今日は『羅生門』のあらすじと感想を書いて行きたいも思います。

 

 


あらすじ

・平安時代末期、主人から暇を出せれた下人が羅生門で雨宿りをしていた。

・羅生門の二階に上がると老婆が鬘を作る為に死体の髪を抜いていた。

・老婆の弁明を聞いた下人は老婆の服を剥ぎ取った



感想


①芥川龍之介の中二病心をくすぐる生い立ち

 芥川龍之介という人は結構暗い過去を背負っています。生後7ケ月に母親は発狂します。そのため母方の実家で育てられます。そして、母は芥川龍之介が11歳の時に精神病で亡くなっています。

 龍之介という名前にもちょっとしたエピソードがあります。辰年・辰月・辰の刻に生まれたためだとされています。

 少し呪いがかったような感じがします。

 芥川龍之介の作品には暗い作品が多いのですがこういった生い立ちが関係しているのかも知れません。

 『羅生門』は東京大学在学中に書かれたものだそうです。

 こういった暗い過去や明晰な頭脳、陰のある作品に高校時代凄く格好いいなと思ったのを覚えています。

 

②パロディーとしての『羅生門』

 『羅生門』は『今昔物語』の「羅城門登 上層 見 死人 盗人語」と「太刀帯陣売 魚 媼語」という二つの話を組み合わさて出来ています。

 『今昔物語』では主人公は元々、盗人であって老婆は自分の主人の髪の毛をむしり取っていたようです。そうすると、老婆はカツラを作る作る為ではなく、肩身として髪の毛を抜いていたことになります。主人が死んだ上に着物を剥ぎ取られるのですから、泣きっ面に蜂ですね。原作の老婆は(^_^;)

「太刀帯陣売 魚 媼語」の方は老婆の弁明の中で出てきます。干した蛇の切り身を干した魚の切り身として売っていた女の話です。

 どちらの話もページ数2ページに程度の短い話のようです。

 

③「下人の行方は誰も知らない。」の一文は何度か書き換えられている

 「下人の行方は誰も知らない。」という最後の一文は書き換えがあったようです。

 大正4年に『帝国文学』に掲載されたときには「下人は、既に雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった。」という文で、次に大正6年に第一編短編小説集『羅生門』に掲載された時には「下人は、既に、雨を冒して京都の町へ強盗を働きに急いでゐた。」という風に書き換えているようです。

 「下人の行方は誰も知らない。」という文章が一番シンプルですね。この一文になったのは短編集『鼻』に大正7年に掲載された時だそうです。色々悩んだ結果、シンプルなものに落ち着くというのはよくあることですよね。

 

④やたらとしつこいニキビの描写

 ニキビは漢字で書くと「面皰」と書くらしくこの短い短編のなかで、何と4回もニキビが登場する描写があります。

 ニキビは下人の青臭さの象徴として描かれており、最後に盗人になることを決心した時に下人はニキビから手を放します。


⑤「下人が雨やみを待っていた」と云うよりも「雨にふりこめられた下人が、行き所が無くて途方にくれていた」と云うほうが適当である。←だったら最初からそう書いて下さい!

 『羅生門』の第四段落は冒頭の情景描写について、作者である芥川龍之介自身が登場して論評するというような構成になっています。

 作品中に作者が登場するというメタフィクション的な技法はギャグ漫画などではよく見かけますが、あまり小説では見かけない気がします。また、同じ漫画でも感動ものの漫画ではこういった技法は見かけません。

 これはやはりこういった主人公から距離を置いた描写があると、読者が主人公の主観に没頭できないからだと思います。

 

⑥老婆の主張 「猿のような老婆」は流石に言い過ぎです(^_^;)

 老婆の弁明はこの小説のメインテーマと言ってよいかと思います。

 その主張をかいつまむと次の通りではないかと思います。

 

・悪人に悪いことをしても許される(髪を抜かれている連中は生前、生きる為に悪いことをしていたから自分が悪いことをしても許してくれる。)

 

・生きる為にする悪いことは許される

 

特に「生きるためにする悪いことは許されえる」という命題はよく問題になるようにおもいます。最近ヒットした映画の『万引き家族』でも生きる為に万引きや年金の不正受給をする様子などが描かれています。

 これについては生き物である以上、老婆の主張にも一理あるように思います。問題となるのは、「本当に悪いことをする必要があるほど追い込まれているのか?」という部分と「本当に生きるのに最小限度の悪いことなのか?」という点ではないかと思います。

 老婆についてみると、生きるために最早、所有者が特定できない死体の髪を抜いているだけなので害悪は少なく、最小限度の害悪だといると思います。

 下人についてみると老婆が所有し、しかも現に着用している衣服を奪っており、着物を老婆が一着しかもっていない可能性も考えると被害の程度は重いと言えます。さらに、暴行を用いて老婆の反抗を抑圧しており、行為の態様も悪質であると言えます。

 私は老婆は許されるが、下人は許されるべきではないと考えます。

⑦下人の罪責

 下人は反抗を抑圧する程度の暴行を用いて老婆の着物を奪っているので、強盗罪の罪責を負います。

 同一の行為で老婆に強制わいせつの罪も考えられますが、強盗の方が罪が重たいので科刑上問題にはならないでしょう。 

 

 


おわりに


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

『羅生門』は教科書に載っていたり、黒澤明監督の映画の題名(内容は『藪の中』ですが…)になっていて文句のない名作だと思います。


今日はこの辺で(^-^)/